Shigeko HIRAKAWA
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・カタログ 『モン・ド・マルサン彫刻展、1997』から、 ピエール・レスタニの文章抜粋: 「平川滋子は参加アーティス トの中で唯一の女性である。1983年からパリに在住し、ボザールで学んで我々の言葉を完璧にこなす。彼女は、モン・ド・マルサンの二つの川、ミドゥーズ 川とドゥーズ川が交わって一つの川ミドゥーズになる合流地点の町の要所ともいうべき ところにランド・アートの豊かなプロジェクトを構想実現した。作業は二つの部分で成立している。川の合流地点の上流のアブロヴォワール 船着場にある半円形の建造物内部の水の中に、薄緑色の樹脂の輪をはさんだ12本の皮つき丸太の柱が突き刺さるように 立っている。この建物の屋根の上部には、アーティストがここに植えたいと夢見たこの地方の植物の代わりに芝生が絨毯のよう に一面に敷かれている。・・・」 <参考文献> ・カタログ『平川滋子、- selected works, 1993-1998』 の ピエール・レスタニ文章、「直 感と理性のあいだ」 1998年 変容 / 生 1997
(歴史建造物、洗濯場の泉水の中のインスタレーション)
現場:カル・ド・ラブロボワール洗濯場(歴史建造物) 100 m2、
フランス、モン・ド・マルサン 高さ250cm、直径 40cmのランド県の松12本、泉水、ポリエステル樹脂 (『モン・ド・マルサン彫刻展、「日本」、サイト・スペシフィック・クリエーション 1997』 モン・ド・マルサン市、デスピオ美術館主催企画野外彫刻展) 作家後記:
南フランスのランド地方は湿気が多く、中世は、ここを通る巡礼が膝まで泥につかりながら歩いたほどの、沼地に等しい湿地帯であったらしい。松の植林を始め たのちに、海岸松はポンプのように地中 の水を吸い上げ、やがて土地を正常化して野菜の栽培を可能にし、また人間が住むことも可能にしたという。松が成長し、人が住めるようになるまで何十年ある いは何百年という月日が必要であっただろう。その歳月を越えて、植物を利用して地下水を制御し、自然と共存するこ とに成功した生きた人間の知恵がここにあった。この事実に感化されて実現した作品が「変容/生」である。作品は、この地域の松の役目をそのままに、水源の ある洗濯場の清涼な水の中に立て並べることにした。 海岸松は、現在もふんだんに湧き出す地中の水を吸い上げ続け、水を大量に含んで相当に重い。この地方の人々をランダムに12人選び、松の幹をかれらの目の 高さに割った。松は切った途端、切り口から汗のように樹脂を噴出させる。ふつう茶色がかっている松脂は、ここでは大量の水で薄められて完全に透明な人 の汗のように噴出す。ミネラルを豊富に含んだこの地方の水の色に似せた緑を選んでポリエステル樹脂の輪を作り、松の木の中を通る水を思わせるように挟んで 天井へ突き上げるように松を立てた。自然の水の循環とそれにかかわる人間の 知恵へ、直裁に興味を運ばれた作品である。 (S.H.) |
カ
ル・ド・ラブロボワール洗濯場 (歴史建造物) 100m2 フランス、モン・ド・マルサン |
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1997年5月 | ||
Transmutation
/ life 変容 / 生 1997 カル・ド・ラブロボワール洗濯場 (歴史建造物) 100m2 フランス、モン・ド・マルサン 高さ250cm、直径 40cmのランド県の松12本、泉水、ポリエステル樹脂 |